グランピングという言葉は、英語の「glamorous(魅力的な、華やかな)」と「camping(野営、キャンプ)」を組み合わせた造語です。言語的には2000年代に入ってからイギリスを中心に広がり始めました。豪華さと自然の融合を体現する言葉として、近年では日本国内でも多くの施設名やプラン名に使われるようになっています。
「glamorous」という単語は、単なる派手さや贅沢さを指すだけではありません。もともとこの言葉には「非日常的な魅力」や「憧れの的」という意味合いがあり、特別感や異空間のようなイメージが強調されます。一方で「camping」は自然と向き合い、最低限の装備で自分の手でテントを張り、火を起こし、食事をするというアウトドアの原点とも言える行為です。
この2つの対極にあるような概念を融合させたのが「glamping」です。言い換えると、グランピングは「ラグジュアリーな非日常体験を自然の中で楽しむ」行為そのものであり、利便性・快適性と自然との接触を両立させた新しい宿泊・体験スタイルを示すキーワードです。
以下に「glamorous」と「camping」の意味の違いと役割をわかりやすく整理しました。
要素
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glamorous
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camping
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意味
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魅力的・華やか・特別感
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自然との共存・自己完結型の宿泊
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雰囲気
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ラグジュアリー・非日常
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素朴・自然体・挑戦的
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イメージ
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高級ホテル・パーティー
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テント・たき火・自炊
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快適性
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非常に高い
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自力で確保する必要あり
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必要な装備
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ほとんど不要、提供される
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自分で持ち込み、設営
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グランピングという造語は、まさに現代社会が求める「便利さと癒やし」「豪華さと自然」を同時に手に入れるためのキーワードであり、時代のニーズに応じたアウトドアの新しいカタチとして広く定着しつつあります。
英語圏では「glamping」はすでに辞書にも登録されている一般的な語彙として扱われています。Oxford Dictionaryには「luxurious or glamorous camping(豪華または華やかなキャンプ)」と定義されており、新聞、テレビ、旅行雑誌、観光サイトなど、さまざまなメディアで使用されていることが確認できます。
英語圏の旅行系サイトでは「Glamping spots near me」「Best glamping in the UK」「Family-friendly glamping」などの検索が日常的に行われており、体験型宿泊施設のカテゴリとして確立されています。また、AirbnbやBooking.comなどの予約サイトでも「glamping」がカテゴリー分けされており、キャビン、テント、ツリーハウス、ドームテントなど多様なスタイルの宿泊先が掲載されています。
実際の英語圏での使用例を以下にまとめました。
使用例
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解説
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Let's go glamping this weekend.
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週末にグランピングに行こうという提案
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This glamping resort offers spa and sauna.
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このグランピング施設にはスパとサウナがある
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Glamping is perfect for nature lovers who don't want to rough it.
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自然は好きだけど不便は嫌という人にぴったり
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また、InstagramなどのSNSでも「#glamping」のハッシュタグは人気です。ビジュアル志向の強い現代において、「glamping」という単語は体験そのものだけでなく、「映える空間」を求める層にも刺さるワードとなっているのです。
このように英語圏では単なるアウトドアの一形態としてではなく、「快適なライフスタイルの延長線として自然を楽しむ」という文脈で使用されている点が特徴的です。
「グランピング」という言葉を見たとき、多くの日本人は「また新しい和製英語かもしれない」と感じるかもしれません。しかし、この単語は和製英語ではなく、英語圏発祥の正真正銘の英語です。前述のように、OxfordやCambridgeといった英語辞典にも正式に掲載されており、英語圏で自然に使われている実績があります。
ただし、日本における「グランピング」の受け取られ方には独自の解釈が見られます。日本では「グランピング=豪華キャンプ施設での宿泊体験」という意味合いが強く、特に「手ぶらでOK」「おしゃれ」「非日常」「カップル・ファミリー向け」といった文脈が前面に出ています。
一方で、英語圏では「glamping」は必ずしも宿泊が主目的とは限らず、「星空ディナー」「ヨガ体験」「森林浴ワークショップ」など多様なアクティビティ体験を含む概念として広く捉えられています。
以下に日本と英語圏における「glamping」の意味と捉え方の違いを整理しました。
地域
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意味の傾向
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具体的イメージ
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日本
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宿泊・施設利用中心
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ドーム型テント、BBQ、ベッド完備
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英語圏
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ライフスタイル体験中心
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ツリーハウス、キャビン、アクティビティ付き
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現代のアウトドア利用者にとって、快適性は重要な要素です。特にコロナ禍以降、「密を避けつつ自然を楽しみたい」というニーズが急増し、グランピングが一気に注目されました。キャンプ場ではなく、プライベート空間で家族や友人と過ごせるグランピング施設の需要が高まり、今では全国各地に専門施設が誕生しています。
現代人が求める贅沢とは、必ずしも高級品に囲まれることだけではありません。五感で自然を感じながらも、衛生的で安全で、快適な睡眠や美味しい食事を楽しめる「質の高い時間」が贅沢として認識されるようになってきたのです。グランピングはまさにそのニーズに応える存在です。
また、宿泊者が求める快適さには以下のような要素があります。
快適性の要素
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内容
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清潔なトイレと風呂
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専用ユニットバスや温泉付きも人気
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空調設備
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冷暖房完備で夏も冬も快適
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完備されたベッド
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寝袋ではなくベッドでぐっすり眠れる
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プライベート空間
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隣の利用者を気にせず過ごせる
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食事付きプラン
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BBQやコース料理が選べる施設も多い
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